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【健康経営対談】株式会社イトーキ様(後編)
「職場の健康」と「生涯現役社会」の関係
~リーダーはこれからの健康経営をどう語る?〜
これからの健康経営について経営者目線で語り合う、イトーキ平井社長とタニタヘルスリンク丹羽によるトップ対談後編。
働き方改革や健康経営の認知は広まってきましたが、一方で、それは一部の大企業だけのものではないか、地方や中小企業には浸透していないのではないか、という声があるのも現状です。そこで後編では、これまでの健康経営には何が足りなかったのか?そして、今後企業が取り組むべき健康経営はどうあるべきか?などを、タニタヘルスリンク社員がインタビューしてきた模様をお届けします。
記事前編:新しい働き方を、健康視点で考える▶
タニタの健康経営事例はこちら
■日本の健康経営の課題
“「健康経営」という言葉が広まる一方で、陥りがちな落とし穴。“
―― はじめに、いまの日本における健康経営の課題についてお聞かせいただけますか。
丹羽:
経済産業省主催の2019年度「健康経営アワード」では健康経営銘柄が37社選ばれ、また、「ホワイト500」に認定された企業はすでに800社になりました。
今や多くの企業が健康経営優良法人になりたいと考え、中小企業の応募も前年の3倍近く増えているほどです。それは悪いことではないのですが、最近気になっているのは、「健康経営銘柄に認定されたいから、とりあえずやっています」という企業や、「取得できたからもう安心」という経営者が多いことですね。
*「健康経営の認定制度」
「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの1つとして、2014年に経済産業省が東京証券取引所の上場企業を対象とした「健康経営銘柄」の選定を開始。2017年度には上場企業に限らない「健康経営優良法人認定制度」も開始。大規模法人部門の健康経営優良法人は、別名「ホワイト500」と呼ばれています。
平井様:
往々にしてそうなりがちですよね。だから、表面的に繕っただけでは認定を取得できないように、調査の中身をつねにブラッシュアップしていくことが必要です。
丹羽:
そこは、毎年、調査内容や質問項目を変えているようですけど、「〜に取り組んでいますか?」といった設問が多いんですね。これでは全従業員がやっていようが、一部がやっていようが、答えは同じなので、「設問にあったからその制度だけつくりました」で済んでしまいます。ゆくゆくは全社的に取り組んでいるのか、それでどんな効果が出たのかといった設問を入れていかないと、真剣にやらないんじゃないでしょうか。
平井様:
はい、働き方改革も健康経営も本当は従業員がいかに「活き活き」と働ける環境をつくるかが大切だと思います。労働人口が減っていく中で、企業としての生産性を上げ、現場の人たちが健康に働いている状態をつくっていかないと、いま出ているKPIだけでは不十分じゃないでしょうか。1億の人たちが活き活きと働いていられる、そういうフラットな考え方が必要だと思います。
丹羽:
そうですよね。
平井様:
そもそも働くこと自体が辛いもの、生活の手段だけのものになってしまってはダメです。誰かの役に立つもの、人間として嬉しいもの、喜びや誇りを感じられるもの、そういう意識に持っていくことが日本を元気にすることに繋がると思うんです。
*「働き方改革」
少子高齢化で生産人口が減少していく日本において、働き方を多様化することで成長と分配の好循環を生み出し、「1億総活躍社会」を実現していくことを目的にしたもの。今後、高齢化社会の先頭を走る日本が、世界に誇る社会保障制度を維持していくためには、「健康経営」と「働き方改革」が両輪となっていくことが必要です。
■健康経営で実現したい姿とは
“主役は現場にあって、経営者の役割は主体性を育てる環境をつくること。“
―― 目指すべき健康経営において、組織と個人はどんな関係がベストだと思いますか?また、自社の従業員や日本のワーカーのどんな姿を実現したいのでしょうか?
丹羽:
健康経営においては、組織と個人は一体だと考えています。会社が生産性を上げるためには健康経営という手法が必要で、会社は従業員の健康や幸せを常に願い働きやすい環境を整えようとしていることを常に発信しなければならないですし、そこに一人ひとりが共感すれば一体感が醸成されます。それがあるべき組織の姿ではないでしょうか。
平井様:
そうですね。別の言い方をすれば、個人がどれだけ自律しているかです。個人が何を考え、どうしたいのかを引き出していくのが組織であり、主役は現場にあって、一人ひとりがいかに自分の考えを持ち、それをどれだけ自由に表現できるか。そういう環境をつくっていくことが経営の役割だと思います。上の人間が古臭い価値観で引っ張っていくのではなく、リーダーは目立たなくていいから、個人が自律できるように導いてあげる。それがこれからのリーダーシップなのです。
丹羽:
個人が自律して、会社とビジョンやミッションを共有し、それに対していろんなアイデアを提供してくれたら、それは強い組織ですね。
平井様:
はい、逆にそうじゃないと。1人のカリスマ的なリーダーのもとでやるのではもう企業は持ちませんよ。
丹羽:
弊社もそこを目指しました。経営層が方向性を出して、現場のプレイヤーがそれを受けて戦略・戦術をつくっていくようなピラミッド型組織ではなかなか成長していきません。そこでホラクラシー型と言われるようなアメーバ式で、自分がこういうことをやりたいと発案する際に、自由に人を集めてプロジェクトをつくっていくような組織を目指しました。まあ、いきなりは難しいので試行錯誤している所です。
2017年からフリーアドレスを採用しているタニタヘルスリンクの「健康オフィス」
平井様:
わかりますよ。束縛されながら仕事することに慣れ過ぎてしまっているんですね。これまで日本全体がいわば軍隊的なやり方で成長してきたので、辛くても耐え忍びながら切り抜ければ何とか成果が出ていた。時間やストレスと引き換えにお金をもらうみたいな。それを崩すのは簡単ではないですけど、我々のように、これからの健康経営をリードしていこうという企業はそこを変えていかなくてはなりませんね。
丹羽:
もちろんです。平井社長と同じ想いを共有して参加させていただいているFROM PLAYERは、まさにそういうメッセージですよね。会社という組織を超えながら、本当に働く人のためにこんなことをお互いやろうよということを、もっと喧々諤々やりたいですね。
*「FROM PLAYERS」
これからの「いいはたらく」を実現するために、異業種の11のブランドや企業が集結し、働き手視点で新しいソリューションコンテンツをつくりあげていく企業横断型プロジェクト。
■多様化時代の健康価値
“「個人の幸せが会社を強くする時代」になった”
―― イトーキ様もタニタヘルスリンクも、もともとの事業自体が「健康・働き方」に親和性の高い業界ですが、そうではない業界・業種の経営者様の場合は、健康と経営戦略がどう繋がるかピンと来ない企業様も多いかと思うのですが。
丹羽:
確かに、弊社はミッションやビジョンが人々を健康にするということなので、健康経営にリーチしやすいというのはその通りです。
しかし、直接的には健康分野に関係しないように見える業界や企業でも、健康経営は必要があると私は考えます。会社が働いている人たちの幸せや将来の健康までを一緒に取り組んでいくというメッセージを発信することで、従業員のモチベーションやエンゲージメントは高まるものと思います。
事例紹介:タニタ健康プログラム導入企業の声▶
もし、経営戦略と社員の健康は関係ないとなってしまいますと、新しい人材も集まりづらいですし、今、働いている方々も、将来このまま健康であり続けられるのだろうかという不安を抱き、生き生きと働く姿勢が阻害されるのではないでしょうか。
平井様:
それは簡単にいうと「個人の幸せが会社を強くする時代」になったということだと思います。そうしないと会社もやっていけない時代になってきたんです。一人ひとりと真剣に向かい合うことで、会社は成り立っていくし、強くなっていくと思います。今まではそうじゃなかった。ひと昔前は、従業員はいわば体力勝負。辛くてもやりきれば「お前よくやったなぁ」と、それで成り立っていた時代でした。
でも、これからは、個人の幸せのベースになるのは健康ですよ。従業員や家族が健康であってはじめて仕事ができる。ゼロからプラスへポジティブな健康ゾーンへ向かうほど、個人のパフォーマンスはいっそう発揮できる。その意味から、健康経営は経営戦略そのものなのだという意味づけができるんじゃないでしょうか。
イトーキのVision Statement(ビジョンステートメント)(上)とタニタヘルスリンクの企業理念(下)
イトーキのVision Statement(ビジョンステートメント)(左)とタニタヘルスリンクの企業理念(右)
■2030年の健康経営
“社会を支えるために、平井社長にも85歳まで現役で頑張っていただきたい(笑)”
―― この2〜3年で健康経営への注目度が高まっていますが、これから5年後や10年後、健康経営はどうなっていくとお考えですか?
平井様:
一人ひとりの幸せをさらに追求していくことで、企業も強くなるし、存在価値も高まっていくでしょう。時間はかかると思いますが、価値観をもっと大きく変えていかないといけません。
丹羽:
健康経営の目的の一つは、現役のうちに健康習慣を身に付けて、70歳になろうが80歳になろうが健康であり続けて、自分の好きなこと・やりたいことを精一杯続けられるような「生涯現役」の人生を送ってもらうことだと思っています。タニタヘルスリンクでも「自分らしく好きなことを楽しみながら、いつの間にか健康になっている」というソリューションを提供していくことが重要なテーマの1つです。
平井様:
大切なことですよね。
丹羽:
健康経営に取り組んでいる企業はまだ数千社というレベルなので、日本にある数百万という企業がこれに気づいて、舵を切っていく流れをここ3〜5年でつくれないと、子どもや孫が安心して暮らせる世の中にはならないのではないでしょうか。この先、65歳以上が人口の半分近くになり、その人たちが働かなくなると、国民皆保険制度で社会を支えることは難しくなります。ですが皆さんが85歳まで健康でいて、週3日でも働いていただけたら今の社会保障制度を守ることができるんです。従いまして平井社長にもぜひ85歳まで現役で頑張っていただきたいと期待しています(笑)。
平井様:
いやぁ、もうちょっとハードルを下げていただきたいですね(笑)。
―― 最後に、健康経営にこれから取り組もうとしている経営者の皆さまにメッセージをどうぞ。
平井様
:
やはり心とからだの健康が揃って、初めて健康と言えるし、それがなかったら企業は成長できないでしょう。このことに大企業も中小企業もないですよ。
すでに健康経営に取り組んでいる企業も、これから健康経営をやっていこうという経営者も、世の中に貢献して、ポジティブな世界を作ろうと意識して行動すべきではないでしょうか。単に生活の糧としてストレスを溜めながらネガティブな状態で生活していたら個人の幸せは訪れません。
そもそも何のために働いているのだという、そういう本質的なところにみんな気づき始めてきた。一人ひとりが健康であり、優秀な従業員の集団であってほしいという想いを、いろいろな企業の皆さまと分かち合っていきたいですね。
丹羽:
“人財”といいますが労働人口が減少していく中、企業を存続し成長させていくためには、従業員がいつまでも健康でこの会社で働きたい・良い会社にしていきたいと思ってもらえることがとても大切です。
健康経営は、トップが従業員に対して発する最も熱いメッセージです。
従業員と家族が健康であり続けてもらいたいという想いを発信するものですし、そんな想いを抱く経営者で日本中が溢れたら素晴らしいと思います。
これから健康経営に取り組まれる経営者の皆様には、自社の状態を正しく把握し、ただ取り組むだけではなく、その先の課題解決に役立てていただければと思います。
これからの時代で生き残るためには、企業規模や職種に関わらず今、企業トップ自らが健康経営に真正面から取り組んでいくことが必要不可欠です。1億総活躍社会・生涯現役社会を目指し、健康経営のトップランナーとして、「日本を元気に!」をテーマに新しい挑戦を続けるイトーキとタニタヘルスリンクにぜひご期待ください。
記事前編:新しい働き方を、健康視点で考える▶
対談日:2019年3月22日
健康経営にお悩みの方、ご興味ある方もお気軽にご相談ください。
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